ハステロイの熱処理

 ハステロイはステンレス鋼と同様、所定の塑性加工(圧延、鍛造、押し出しなど)の後に熱処理を行って、残留応力の除去と金属組織の改質を図ります。では、ハステロイの製缶加工ではどうなのでしょうか。

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熱処理の要否を検討する製缶加工とは

 どの加工で熱処理の要否を検討すべきかは容易に判断しづらいですが、主として下記のような加工の後が考えられます。

①溶接施工後

 一般に溶接熱影響部は粒界腐食を起こす可能性が、溶接部近傍の残留応力は変形や応力腐食割れの原因となる可能性があるとされます。

②冷間加工後

 小さな曲率半径で板やパイプを曲げる場合、鏡板や管継手の成形ないしは深絞りなどにおいて、伸びが不十分であると割れる可能性があるとされます。

製缶加工における熱処理の目的とは

 前項のような可能性が無視できない場合は、下記を目的とした熱処理の要否を検討します。

①溶接後の調質

 熱影響を受けた金属組織を調質し、耐食性と機械的性質を改善します。

②残留応力の除去

 残留応力を除去し、変形や応力腐食割れの原因を低減します。

ハステロイに適した熱処理とは

 ハステロイを熱処理する場合は、オーステナイト系ステンレス鋼同様固溶化熱処理(溶体化処理)で行います。ハステロイには鋭敏化温度域があるため、これを超えた固溶化温度域まで昇温し保持した後、水冷などで一気に急冷します。
 このため、固溶化温度まで均質に昇温できる炉、水冷槽、高温搬送に耐えられるマテハン設備、酸洗など脱スケール設備他が必要となります。

ハステロイ製品の熱処理の要否について

 多くのハステロイは過酷な腐食環境下で用いられることを前提で合金設計されています。    
加えて、ハステロイのどのシリーズにおいても「溶接熱影響部における耐粒界腐食性を改善させる目的の溶接後熱処理は不要」を特徴とする合金がラインナップされています。
 このため、合金メーカーと十分なやり取りの上合金選定することで、溶接後熱処理は行わない設計とする方が一般的となっています。

 一方、溶接以外の冷間加工については、ハステロイの実績が豊富なメーカーの見解を得て判断すべきでしょう。その結果実施する場合には、使用する設備や作業手順・要領についてよく理解の上、製作仕様として決定することが重要です。

 なお、溶接部で局部的に残留応力の影響を低減し応力腐食割れを防止したい場合、熱処理を行わずに溶接部近傍にショットピーニングを加えて、引張応力を圧縮応力に転換する方法が有効な場合があります。

 

ハステロイの研削・研磨加工、酸洗

→ハステロイ製部品のカンドコロ