ハステロイの研削・研磨加工、酸洗

 溶接や組み立てが終わったら、外観や仕上がり寸法を整えるために仕上げ加工を行います。ここでは常用される工具や加工について示します。

1.グラインダ(サンダー)

 炭素鋼やステンレス鋼に用いるものと特段変わりません。ビードカットや異物の除去に用いるほか、大径のディスクを用いれば中板以下であれば手動切断に用いることも可能です。
 ただし、炭素鋼に用いるものと区別しておかないともらい錆の原因となりますので、砥石を識別するなど治工具管理を行う必要があります。。

2.軸付砥石・フラップホイール

 狭隘部の研削や精密な仕上げには軸付砥石や超硬バーの使用が有効です。ただし、不用な熱変形や加工硬化をきたさぬよう短時間で仕上げるのが望ましいため、事前に幾つかのメーカーや番手で試しておき、常備しておくのが良いでしょう。
 研削面をさらに滑らかにするにはフラップホイールを用います。特にビードの表面を仕上げるときは、同時にその両側各20~30mm程度の幅も研磨すると見栄え良く仕上がります。

3.バフ研磨

 バフ研磨は、所定の番手通りに順次仕上げていきましょう。途中で研磨不足の部位があると次の番手で取りきれないので、抜けなく施工するのがポイントです。また稀に、酸洗肌では目立たなかった圧延時の地疵がバフ研磨を行った際、ピットとして顕在化して問題となる場合があります。このような場合は、一旦粗仕上げ程度に番手を落とし多少強めに研磨して地疵を全て取り切ることが大切です。
 ただし、一定の範囲を集中して研磨すると局部変形の原因になりかねないので、適切に冷却時間を置き変形の有無を確認しながら進めましょう。

4.電解研磨

 通常のバフ研磨を行った状態では目に見えない細かな砥粒が埋まった状態となっています。これを取り除き、さらに除去後の微細なピットを滑らかにするのが電解研磨です。ハステロイでも電解研磨は可能ですが、条件設定には熟練を要するため、経験ある専門業者を選定しましょう。槽内に浸漬する方法のほか、ハンディタイプのツールを用いて狭隘部やスミ肉継手にも適用できる方法があります。
 また、一部の用途では複合化学研磨(MCP)を用いる場合があります。実績のある業者は電解研磨よりさらに限定されますので慎重に選定しましょう。

5.酸洗・不導体化処理

 ハステロイで酸洗処理を行うことは稀です。溶接部近傍の焼け取り(テンパーカラーの除去)も研磨によるのが一般的です。ハステロイを加熱した後の酸化膜は堅固であり、溶接終了から時間をおかずに研磨することが推奨されます。

 また、ハステロイは圧延肌や溶接放しの状態で広範囲の腐食雰囲気で良好な耐食性を示しますから、敢えて不導体化処理を行う必要がありません。

 そもそも耐酸化性の高いハステロイに適した酸洗液を選定するのが難しかったり、不導体化処理が不要であったりすることから、溶接部の仕上げのために酸洗処理やその除害設備を準備することはあまり一般的でないと言えるでしょう。
 ただし、顧客によっては酸洗や不導体化処理を標準仕様として要求する場合は多いので、仕様決定時に協議しておくべきと思われます。

 

ハステロイの溶接施工

ハステロイの熱処理