RTフィルムで対話する

 前項でも述べたように、適正なRTを行うには検査を依頼する側、すなわち溶接を行う側にもそれなりに知識と経験(スキル)が必要です。ここでは、撮影されたRTフィルムを見ながらのどのような対話があるのか見てみましょう。

「すみませんが再撮影です」

 納期が迫っている時など、ついRTの判定結果を待ちわびることになります。そこでRT業者から「すみませんが再撮影になります」と言われるとがっくりくるものです。でも再度撮影しなくてはならないのには理由があります。RTフィルムには「具備すべき条件」というのがあり、これを満たさないフィルムで判定してはならず再度撮影しなければならないのです。

「余盛高さが大きすぎ」

 目視試験(外観試験)について考えるで述べたように、溶接部の余盛が一定の高さ以下でないと欠陥を判別できる濃度差の条件を満たさず、指示の検出ができなくなります。このような場合、研削などにより規定の高さまで減らす必要があります。

余盛

「二番を見てみよう」

 裏ビード止端部(二番とも言います)に不連続なアンダカットがあると、RTフィルム上で溶接部内部に線状欠陥があるかのように見える場合があります。アンダカットと内部欠陥では判定基準も手直し方法も異なるため、まずは内視鏡などでどちらかを判別しなければなりません。なお、アンダカットであれば裏波ビード母材の境界部を研削することになりますが、奥の方は見えづらいので母材部を不用に減肉させないよう注意して仕上げましょう。

「研磨きずか?割れか?」

 溶接止端部から母材にかけて線状の像があらわれた時、母材の割れが疑われると同時に研磨による仕上げが粗過ぎて残った場合も想定し、きちんと現物を確認する必要があります。微細なきずの場合、目視で確認しても判別しづらい時があるので、PTなどを行って原因の特定をしましょう。なお、実際に母材が脆化していた場合、母材側に発生したミクロ割れが研磨の際の熱で助長され大きな割れに進展する場合があります。このような場合は高温割れと同様の慎重な補修を施す必要があります。

「きずの位置はどこ?」

 小口径の管の周継手は二重壁両面撮影となりますが、二重壁により母材厚が厚くなることもあって指示が見づらい場合は90度方向から撮影をしたもう一枚での像と合わせて判断することになります。この際、特にRTの有効範囲の境界部に指示があった場合、濃度差が明確に出ずきちんと判定できないことがあります。このような時は、撮影方向を微妙にずらし再度撮影し直さなければなりません。

RT小径周継手

「手直し1箇所、再撮2回」

 長手継手の或るフィルムの有効範囲内ぎりぎりにきずが視認された場合、隣り合う継手のフィルムにも写っている可能性があります。そして例えそれが有効範囲から外れたところにあったとしても、そのきずが確実に除去されたことを証明するため、この隣接したRTフィルムもまた手直し後に撮影しなければなりません。つまり、欠陥の手直しは1箇所でも再撮影は2回やらなくてはならない場合があるのです。

RT隣接

「手直し前か後か」

 特に溶接欠陥が出やすい溶接部のRTでは複数回手直しを行う場合がありますが、そのRTフィルムが手直し前に撮ったものか手直し後かを簡単に判別できるようにしておかないと、誤った箇所を直したり、手直し済みの箇所を再度直したり、あるいは手直しが漏れてしまったり、などということになりかねません。このため、手直し後のRTフィルムに写し込む溶接線番号の末尾へ「R」と追番をすると明確に判別することができます。

 

 RTの撮影ならびに判定の一切を業者に委託することは取り決め上可能と言えますが、RTの要求仕様を適切に満たすためにも、こうしたことを考慮に入れリアリティを持って業者と対話するよう心がけましょう。

 

放射線透過試験(RT)の準備をしよう

溶接部非破壊検査の実施手順