第八話 この雲に乗せて

 誰しも過ちはあるもの。早く忘れてしまいたいのはもちろんのこと、他人に知られぬようそっと消し去りたいものだってあります。よく「人の噂も75日」などといいますが、IT社会の今日、「デジタル・タトゥー」などというおぞましいものまで現れハンパではありません。過ちは糺されるべきですが、反省すべきものは反省し、気持ちを切り替え、めげずに前に進んでいきたいものです。

 さて、ものづくりの世界ではどうでしょうか?。
 そもそも、ものづくりは失敗と訂正の繰り返し。「ミスしたから恥ずかしい」とか「なかったことにしよう」などと逡巡せず、速やかに伝え訂正しなければなりません。
 そして、その手際によっては、ものづくりに携わる姿勢さえ問われかねないのです。

 したがって、新旧(あるいは正誤)の違いが瞬時に理解でき、確実に作業に反映できるような工夫が必要です。その方法の一つに「見え消し」があります。
 例えば寸法の場合、誤った数字を2本の横線で消しその近傍に正しい寸法を追記します。さらに改訂マークや雲マークを加えれば、加工者の注意を瞬時に促し、直感的に変更内容を理解させ、的確に作業へ反映させることができるのです。

 ところが、この手法は今や「絶滅の危機」にあります。そもそもCADの特徴は、入力した数字がそのまま外形図の形状に反映されることにあるため、この手法が適用できないのです。また、最近の図面はA3サイズで印刷する都合から、レイアウト上全般的に余白が少なく、コメントとして書き入れるスペースも確保しづらい、との事情もあります。

 図面を読む立場の製造現場も今やタブレットやディスプレイなどペーパーレスの時代。こうした手法は消え去る運命にあるのかもしれません。しかし、その良いところも取り入れられるよう、DX技術の懐の深さに今後期待したいものです。

「わたし、変わったの」
この雲に乗せあの人へ
今の自分を伝えたい

2022年8月18日

「国家規格」は著作権の夢を見るか?

進め、チョー合金!

見え消し