第 四 話 話は元から毛は先から

 私事ですが、私の母親は2000年に71歳でこの世を去りました。田舎の高等女学校出の純朴な女性でしたが、経験も縁故もない都会暮らしに耐え、単身赴任ばかりの夫によく仕えました(今やこの表現自体がNGとは思いますが)。この母親は子供を叱るときにさまざまな警句を発していました。私自身が歳を重ねてしまい、今やそのほとんどを忘れてしまいましたが、特に印象が残っているものに「話は元から毛は先から」というのがあります。髪を梳(くしけず)るとき、つむじから毛先に向かって梳(す)くと毛束の抵抗にあって毛根に張力が働き傷めるので毛先から梳き始めなさい、でも話しかけるときは逆に最初から順序立てて話しなさい、との教えです。膝を打った年端もいかない私は爾来これを励行してきましたが、おかげで「お前の話は長い。早く結論を言え」と言われる始末。このため、なるべく簡潔に伝える工夫を強いられることが多くなりました。

 が。今振り返ってみると、実は「話は元から・・・」には色々なメリットがあったのだ、と気づかされます。例えば、実務において相手に重要な技術情報を伝える前段でそのプロットとその構成要素やホールドポイントの把握を意識しておくと、ISO9001でいうプロセスアプローチが容易になることがよくわかります。また、既設品や競合品との比較を行うとき、相違点やそこから想起される改善ポイントの抽出ができ、相手への訴求力が一段と増しますし自らの頭の整理にも役立ちます。この「メソッド」は、製作手順作成、工程管理、不適合処理、拡販活動など、およそものづくりに関わる色々なシーンで活用できると思います。

 こんな時代だからこそ、先人の教えは貴重です。慌ててことを起こさず、まずはじっくりと悩みましょう。

ソクラテスもプラトンも
ニーチェもサルトルも
みんな悩んで大きくなった
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2022年1月9日

ミルシート

人の振り見て我が振り直せ

ソクラテス

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