第五話 人の振り見て我が振り直せ

 恐れながら、今回はわが身の恥をさらすことにします。

 コロナの蔓延が始まってから随分と時間が経ちました。この文章を書いている現在は、ようやく第6波のピークアウトか、とも思われますが、まだまだ予断を許しません。しかし、我ながら最近は「慣れ」により緊張感が少し鈍化してきたような気がします。

 そんなある日、所用で地方の取引先を訪れた時のこと。現場仕事の進捗を眺めつつたたずんでいると、とある社員の方からこう問われました。「今日はどちらから?」。さらに「PCRは済ませましたか?」と質問は続き、私が思わず「いいえ。特に事前にお話はありませんでしたが」と答えるとその方の表情が俄かに険しくなり、こう言われたのです。「それは常識としておかしいでしょう。県をまたいで移動するのですから。何も話がなくても検査をしてから来るべきです」。私は一瞬で自らの過ちに気づき、顔が真っ赤になりました。
久しぶりの遠地移動で勝手がわからなかった、などと言いわけも考えましたが、非常識の上塗りになりそうなのでやめました。ともかく配慮に欠けた行動に違いはなく、力無く首を垂れ、その後抗体検査キットを入手し、お詫びを交え結果をお伝えしました。

 オミクロン株の「出始め」の時、在日米軍駐留地から多く検出されたことが話題となりました。その当時は私も「米国出国時に検査をやっていないとはなにごとか」とテレビの前で憤ったものですが、なんのことはない、当の私が「我が振り」に気づいていなかったのです。

 この「教訓」は私たちの仕事の進め方にも通じます。環境や状況を正しく読み、相手をリスペクトした上で、相互の見識や経験を共有し、互いに納得いく着地点を目指したいものです。

いそぐとも 呼吸整え 見渡して
たどる道のり 防ぐいさかい

2022年3月11日

話は元から毛は先から

きいてないよー!

三面鏡