母材の区分(溶接施工法)

 ニッケル合金の溶接施工法を確認する時に「母材の区分」を特定しなければならない時があります。そもそもこの「母材の区分」とは何のことなのでしょうか。

母材の区分とは何か?

 溶接を行うとき、実際の施工に先立ちその方法(溶接施工法)の適否を確認しなけれなりません。要求仕様によっては、定められた書式での報告が求められることもあります。
 ただし、個々の材種ごとにこれを確認するのはなかなか大変です。そこで、全材料を似通った材種を集めたいくつかのグループ(区分)に分け、同一区分内では同材質として扱うことができるようになっています。この区分は採番の上規格化されており、一般に「P-No.」と呼ばれています。
 この区分を下記に示します。

母材の区分

ニッケル合金の区分では準拠規格に注意!

 上表で示した通り、JISとASMEでは区分が違うものがあり、材種によっては運用が異なる場合がありますので注意が必要です 

 例えば、ASME準拠で溶接施工を行う場合、P-No.43のインコネル600とハステロイC-276は溶接施工法上は同材質と見做されるので、インコネル600同士のPQR(溶接施工法確認試験記録)があればハステロイC-276同士もしくはハステロイC-276とインコネル600の異材継手WPS(溶接施工要領書)をサポートすることができます。

 一方、JIS準拠で溶接施工を行う場合、ハステロイシリーズはそもそも母材の区分が規定されていませんから、それぞれ別の材種と見做され、前掲のようなハステロイC-276同士ならびに異材継手のいずれも、新たに溶接施工法を確認しなければならないことになります。

まず確認すべきなのは?

 適用法規や準拠規格によっては所有のPQRが適用できず、最悪の場合には溶接施工法確認試験をやり直さなくてはならないことがあります。それでは手間もコストもかかってしまいますので、事前にこれらをよく確認しておきましょう。