強さを考慮した合金選びのカンドコロ

 一般的なステンレス鋼と比較してかなり高価であるニッケル合金の選定に当たっては、別項でご説明する耐食性や耐熱性に加え、ここまでご説明してきた「強さ」を考慮に入れ、なるべく薄く小さな部材寸法とするような工夫も必要となる場合があります。

 ここでは、個々の合金の「強さ」に関わる設計上のポイントをいくつか挙げたいと思います。

1.耐食性や耐熱性が同レベルであれば、比強度が高くコスパが良いものを選ぶ。

2.クラッド鋼の採用を検討するとき、合わせ材と同材質をソリッドとした場合の強度計算を行い、材料費の増加分と加工費の減少分の相殺可否を検討する。

3.ジャケット付き槽の外圧を受ける部位にニッケル合金を用いる場合は、適用する規格で強度計算に必要な外圧チャートが規定されているかを確認する。

4.多管式熱交換器などで伸縮継手の設計が必要な場合は、適用する規格で線膨張係数や0.2%耐力など、強度計算に必要な数値が規定されているかを確認する。

5.強度計算に用いる腐れ代は、適切に選定されたニッケル合金を用いることを前提に原則ゼロとする。

6.以上の検討に用いる強さに関わるデータは、必ず適用法規や準拠規格の規定を正しく引用し、常に出典を明らかにしておく。

7.本体部の円筒胴の肉厚を決定する場合は、耐圧計算だけではなく、例えば満水状態での自重に対する座屈なども考慮する。

 なお、これらは、ニッケル合金以外のより一般的な金属材料でも考え方は同じであると言えます。

 

許容引張応力、比強度をみてみよう