PTの準備をする

準拠規格と適用法規

  作業を始める前に、まずは適用法規を含む顧客の仕様や社内の基準を確認しましょう。特に圧力容器の場合、適用法規によっては強制規格として非破壊試験の種類や内容が詳細に規定されており、これを見落としてしまうと大きなトラブルになりかねません。
 また、こうした強制規格はJISなどの公的規格を引用することが多いため、これらに対して正しい知識をもつ意味からもこの確認は必須です。

試験方法

 国内では、JISZ2343「非破壊試験-浸透探傷試験」によるのが一般的です。なお、Z2343は下記の通り複数の規格で構成されています。

JISZ2343-1 第1部:一般通則:浸透探傷試験方法及び浸透指示模様の分類
JISZ2343-2 第2部:浸透探傷剤の試験
JISZ2343-3 第3部:対比試験片
JISZ2343-4 第4部:装置
JISZ2343-5 50℃を超える温度での浸透探傷試験
JISZ2343-6 10℃より低い温度での浸透探傷試験

 つまり、寒冷地や酷暑の環境下での試験作業までもが規定されています。

 先述の通り、強制規格である圧力容器構造規格(第一種圧力容器など)や高圧ガス保安法特定設備検査規則(高圧ガス特定設備など)では、概ねこれらのJISを引用し規定しています。

 一方、米国では、ASME Boiler & Pressure Vessel Codeの Section V Article 6に、Liquid Penetrant Examination(液体浸透探傷試験)として規定されています。海外製もしくは海外に納入する圧力容器などの溶接構造物はASMEに準拠することが多いため、同規格を確認しておくのがよいでしょう。

判定基準

 JISZ2343にはかつて判定に用いる等級分類が示されていましたが、現在では指示模様の分類の定義にとどめ、どの程度を合格とするかは各用途ごとに定められた別規格や強制規格での規定に委ねています。
 なお、本稿にフィットするJISとしてはJISB8265「圧力容器の構造-一般事項」が挙げられます。この8.3項では下記のものが全てないものが合格であるとされています。

  • 表面に割れによる浸透指示模様がない。
  • 線状浸透指示模様の最大長さが4 mm以下である。
  • 円形状浸透指示模様の最大長径が4 mm以下である。
  • 分散浸透指示模様については,面積2 500 mm2内において浸透指示模様の種類及び大きさに対応して,表10(割愛)に示す点数の総和が12点以下である。

 一方、先述の強制規格では下記に規定されています。

 圧力容器構造規格 第61条の3
 特定設備検査規則 別添1第65条の2

 上記のほか、「発電用火力設備に関する技術基準を定める省令」の技術的内容の解釈も公示されており、その別表第28に判定基準が規定されています。

 ASMEの場合は、圧力容器の場合の判定基準がSectionVIII Division1のMandatory Appendix 8に規定されています。

 なお、多くの規格では磁粉探傷試験の規定を引用もしくは準用しています。

有資格者

 浸透探傷試験を含む非破壊試験は特殊工程にあたるため、適切な非破壊検査員資格を有する者以外は従事することができません。ビジネスの内容を踏まえ、あらかじめ有資格者を必要数揃えるか、十分な有資格者を擁する協力会社に委託しましょう。
 なお、非破壊検査員の資格には3つのレベルがあり、それぞれ従事できる作業が限定されています。協力会社などに業務委託する場合などにおいて、レベル1単独では判定などの作業ができないので注意が必要です。この区分は、RTやUTなど他の非破壊検査でも同じです。

非破壊資格レベル1

 

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