耐熱合金選定のポイントは?

 それでは数ある耐熱合金の中から最適なものを選ぶにはどうしたら良いのでしょうか。

1200℃を超える雰囲気ならまずは高融点のものを選ぶ

 使用温度が1200℃を超える場合、まずはその温度に耐えなくてはなりません。使用温度より50℃程度以上高い融点を持つ合金から選びましょう。そのためには使用温度をある程度正確に押さえておくことも重要です。なお、これほど高温となると対象となる雰囲気内でばらつきがあるものです。できるだけ温度分布を調べ、選定ミスを防ぎましょう。

主な耐熱合金の融点(参考):正確には各メーカーのカタログを参照ください。

合金名 融点(℃)
インコネル800H 1355〜1385
ナイモニック75 1390〜1420
インコネル600 1371〜1427
インコネル601 1301〜1368
ハステロイX 1260〜1355
ヘインズアロイNo.25 1325〜1410
ヘインズアロイNo.188 1312〜1324
UMCo50 1388〜1427
マルチメット 1288〜1354

雰囲気内の成分も考慮する

 使用温度が1200℃以下の場合は、使用環境がどんな雰囲気で満たされているのか、あるいは雰囲気にどんな不純物が混じっているのかなども合金の選定に関わってきます。

窒素雰囲気

 例えば、インコネル601は優れた耐酸化性を持つ合金ですが、窒素リッチな還元性雰囲気には不向きです。これは、耐酸化性を持たせるために添加するアルミニウム成分が、一定の温度域で窒素と結びついて低融点化合物を作り、これが原因で割れを生じさせるからです。このため、インコネル600やハステロイXの方が無難であるとされます。

硫黄の含有

 重油などを熱源とする場合雰囲気に硫黄が多く含有されますが、硫黄も一定の温度域でニッケルと結びつき割れを生じます。これはサルファーアタックと呼ばれニッケル合金の大敵です。UMCo50などのコバルト合金もしくはMCアロイが向いているとされます。特にUMCo50は高価で切削加工性も悪いので、高温となる部位にだけ肉盛溶接する方案も考えられます。

大気雰囲気

 大気には酸素が含まれていますから使用温度における耐酸化性を考慮する必要があります。金属温度は雰囲気の内外でほぼ変わりませんから、例えば炉内の雰囲気を考慮して選定した合金が大気に曝される外表面の耐酸化性についても問題ないかは一応調べておきましょう。一方、シンプルな大気炉に対し必要以上に高性能な合金を用いることなく、コストパフォーマンスを十分考慮に入れて選定しましょう。

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