強さを考慮した合金選びのカンドコロ

 一般的なステンレス鋼と比較してかなり高価であるハステロイをはじめとするニッケル合金の選定に当たっては、別項でご説明する耐食性や耐熱性に加え、ここまでご説明してきた「強さ」を考慮に入れ、なるべく薄く小さな部材寸法とするような工夫も必要となる場合があります。

 ここでは、個々の合金の「強さ」に関わる設計上のポイントをいくつか挙げたいと思います。

1.耐食性や耐熱性が同レベルであれば、比強度が高くコスパが良いものを選ぶ。

2.クラッド鋼の採用を検討するとき、合わせ材と同材質をソリッドとした場合の強度計算を行い、材料費の増加分と加工費の減少分の相殺可否を検討する。

3.ジャケット付き槽の外圧を受ける部位にニッケル合金を用いる場合は、適用する規格で強度計算に必要な外圧チャートが規定されているかを確認する。

4.多管式熱交換器などで伸縮継手の設計が必要な場合は、適用する規格で線膨張係数や0.2%耐力など、強度計算に必要な数値が規定されているかを確認する。

5.強度計算に用いる腐れ代は、適切に選定されたニッケル合金を用いることを前提に原則ゼロとする。

6.以上の検討に用いる強さに関わるデータは、必ず適用法規や準拠規格の規定を正しく引用し、常に出典を明らかにしておく。

7.本体部の円筒胴の肉厚を決定する場合は、耐圧計算だけではなく、例えば満水状態での自重に対する座屈なども考慮する。

 なお、これらは、ニッケル合金以外のより一般的な金属材料でも考え方は同じであると言えます。

 

桐岡 明

執筆者:桐岡 明

溶接工学技術コンサルタント

1981年慶應義塾大学機械工学科(溶接工学)卒。同年三菱金属(現三菱マテリアル)に入社。 以降一貫してニッケル合金製圧力容器・配管の製造技術管理に携わる。2001年より8年間、インドネシア製造子会社駐在(内3年間は代表取締役社長)の後、 営業子会社海外事業部門長(タイ子会社社長、シンガポール支店長を非常勤で兼務)。 インドネシア営業子会社設立、タイBOI取得、ISO2015年度版取得対応などを経験。 溶接技術者特別級、高圧ガス製造保安責任者の取得歴あり。現在は、溶接管理技術、新技術社会実装、安全衛生管理体制確立などを支援中。

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