第六話 きいてないよー!

 これを書いている今、北京冬季オリンピックで日本人選手の活躍が連日報道されています。
 が。今一つ心の底から楽しめない、腑に落ちない思いも。特に女子スキージャンプ選手のスーツ規定違反は誠に残念なニュースでしたが、中でもその検査方法がおかしいと言うのが話題になっています。大体バンザイで飛ぶなんて、大昔のジャンパーかムササビくらいしかやらないでしょう。ですが、ここでハイライトしたいのは「抜き打ち検査」と言うワードとそのやり方です。

 そもそも「抜き打ち検査」とは、「事前予告せぬ抜き取り検査」であると言えるでしょう。世に不正が蔓延る限り、そして明確に規制するルールがある限り、抜き打ち検査は最大の牽制力となることは確かです。
 一方、JISなどの産業規格では「抜き取り」について様々な産業セクタを念頭に置き、母集団のサイズに合わせた抜き取り率や不合格が判明した際の処置が定められています。例えば、サンプルに不合格品が出た場合、その母集団(ロット)からさらに倍数の再サンプリングをし、すべて合格ならば最初のサンプルのみ不合格としロットアウトは回避できます。しかし一つでも不合格が出たら、今度は母集団全体を判定保留として全数検査しなければならないのです。では今回はどうか?その後も不合格者が続出したのですから、競技を一旦止め、順延してでも全数検査するべきだった、と言うことになります。

 運営上順延は避けたい、と言うのであれば検査時期にも工夫が必要です。飛躍後、すなわち「使用後」に検査するのでなく、試合前、すなわち「出荷前」に検査するべき、と言うことは自明です。ボクシングの計量のように検査は試合前に行い、合格したらその状態を何らかの方法で試合前まで保持させる、というのが合理的でしょう。飛躍直前にズルする輩もいるかもしれませんが限界はあるはずです。まずはアスリートのメンタリティ・ファーストで考えるべきでしょう。運営側・選手側共通の収入源である観客は、彼らの最高のパフォーマンスこそを求めているのですから。

 被検者と検査員は常に対等であることをお互いに尊重の上、その方法や判定基準を契約(仕様書)に謳い、周知し、持続的に透明性を確保するべきなのです。

抜き打ち検査とかけて 突然出されたぬるいビールを飲んだ時ととく
そのココロは
あわをくった、と文句言う

2022年2月16日

人の振り見て我が振り直せ

「国家規格」は著作権の夢を見るか?

むささび